当館の常設展示作家で、現代文学の最前線で活躍した森内俊雄さんが8月5日、肺炎のため東京都内の病院で亡くなりました。86歳でした。
大阪生まれですが、両親と奥さまが徳島の出身で、徳島とは深い縁がありました。8歳の時、大阪大空襲で家を焼かれ、徳島に疎開中、1945年7月4日未明の徳島大空襲に遭いますが、母と兄との3人で眉山に逃げ込み、九死に一生を得ました。その体験をつづった小説「眉山」は、芥川賞候補にもなりました。
研ぎ澄まされた感性、人間への深い洞察力などが森内文学の特色で、『翔ぶ影』(泉鏡花賞)、『氷河が来るまでに』(読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞)のほか、鳴門を舞台にした『梨の花咲く町で』、書道を題材にした『真名仮名の記』などの秀作を残しました。熱烈なファンを持つ、玄人受けのする作家でした。
森内さんの展示コーナーがある当館3階の文学常設展示室を8月18日から31日まで無料開放します。この機会にぜひご覧いただき、森内さんを偲んでいただければ幸いです。